神社崇敬会の秀島です。
神社専門のクラウドファンディングサイト「すうけい」を5月9日にリリースいたしました。現在は、スタートアップの三社、戸隠神社講社会、桑名宗社崇敬会、戸越八幡神社崇敬会にご参加いただいています。メディアにほとんど取り上げられていないので、ご存じない方も多いと思いますが、これを機にお見知りおきを。
今後少しずつ参加神社様も増えていきますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
ご報告が遅くなりまして申し訳ございませんでした。
さて、タイトルにもあるように、現行のクラウドファンディングでは、むしろ神社はもっと苦しくなっていく。というお話です。
書いている私が神社専門のクラウドファンディングサイトを立ち上げているのは違和感あると思いますが、神社が現行のスタイルのクラウドファンディングを行うというのは、神社本来の在り方からすると実は相反した行為なんですね。
いやいや、お前もクラウドファンディングサイトを運営しているんだから同じ穴の狢(ムジナ)じゃないかと言われるかもしれませんが、少し書かせていただきます。
- 神社に広がるクラウドファンディングの利用
- 本当に困っている神社は声すら上げられない現実
- 信仰と無関係なお金
- 現行のクラウドファンディングでは、むしろ神社はもっと苦しくなっていく。
- お金だけが必要なら現行のクラウドファンディングがおすすめ
- すうけいは困った神社を助けるだけでなく、頑張る神社も応援したい
- お金だけでなく信仰と結びついた心の通いを体験してください
神社に広がるクラウドファンディングの利用
弊会サービスの「すうけい」の発表は2年前なのですが、実際にサービスがスタートしたのは今年になってから、これには様々な理由があります。それは神社に特化する仕組みを作り上げることと、コンプライアンスをクリアすること、税制面での関わり合い方など、乗り越えるハードルが多岐に渡るからです。
さらに、弊会創立の哲学でもある「神社を支える」という事業の対象が、規模の小さな、例えば宮司一人で切り盛りしているような神社でも力になれるシステムを作るために2年という月日がかかったわけですが、この2年間で神社のクラウドファンディング利用も活発になってきました。
そんな中、先日とある神社様のプロジェクトの説明文を読んでいまして、ある箇所に目が止まりました。以下の文です。
毎年正月には約5万人が集まる、地元で最も大きな神社のひとつで多くの方の憩いの場ともなって……
この一文を読まれて皆さんはどう思いますか?
災害で失われた施設の復旧に数百万円の費用が必要だからクラウドファンディングで集めよう。すばらしい試みだと思います。
初詣の参拝客が5万人もいる神社様です。
初詣客が5万人以上参拝する神社が日本にどれだけあるでしょうか。
とても恵まれていると思います。
しかし、本当に困っている神社は声すら上げられないのです。
本当に困っている神社は声すら上げられない現実
例として挙げたプロジェクトは「地元で最も大きな神社のひとつ」が立ち上げたものです。正月に5万人もの初詣客で賑わう神社が数百万円の支援を求めてクラウドファンディングプラットフォームを利用する。
内部に支援者もたくさんいるでしょう、
おそらく今後、みなさんの目に触れるのは、クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げる協力者がいて、SNSで拡散してくれる仲間がいて、知名度があって、刀剣乱舞などのコンテンツと絡めるなどの条件が揃った神社だけになっていくと思います。
全国に8万社あるとされる神社の中で、これらの条件が揃った神社がどれほどあるでしょうか。おそらくほとんど無いと思います。初詣客が数百人、数十人しかいない神社は宮司が兼業であったり、兼務社が多数あったりして声すら上げられません。現状でのクラウドファンディングプラットフォームでは、本当に困っている神社は声すら上げられないのが現実なんです。
もともと恵まれた神社がより一層お金を集め、声すら上げられない神社は維持すらままならなくなる。3年前に今の事業を思いついてから、こういう未来になることは予想していました。そして現実にそうなりつつあります。
だからこそ、現行のクラウドファンディングの仕組みではなく、声を上げられない神社まで支えることができる仕組みが必要になるのです。
信仰と無関係なお金
私自身、神社専門のクラウドファンディングサイトを運営しているのに、どうして神社のクラウドファンディングに慎重なことを書いているのか。
というのも、私は前掲のような災害によって失われた施設の復旧プロジェクトについて、ダークサイドを見てしまった経験があり、それ以来、神社がお金だけを集めるという行為に対して拒否反応を起こすようになったという過去があります。
それはこういうお話しです。
とある集落に、もともとは簡素な社殿で、十数人の氏子や地元の人の信仰で成り立っていた小さな神社がありました。その神社、大きな災害によって社殿ごと失ってしまいました。そして、さまざまな団体やコンサルが協力して社殿の復旧に補助金が下りました。
その額、1億6千万円。
氏子が20人足らずの神社の復興に1億6千万円の補助金が下りました。これは公共事業の側面もあると思いますが、氏子が20人の小さな神社の復興に1億円以上の費用が本当に必要だったのか、今でもたまに思い出す出来事でした。
私も実際に現地に行って、復興の様子を見ました。そして、災害によって被害を受けた人や神社を助けることの大切さを感じました。しかし、信仰とかけ離れた場所でお金が動いているという現実も目の当たりにしたのです。
現行のクラウドファンディングでは、むしろ神社はもっと苦しくなっていく。
神社が現行のクラウドファンディングプラットフォームを利用して資金を集めるのには、いくつかの条件を備えている必要があります。様々な事例を見て共通点を見つけたのでその条件を挙げてみましょう。
- 御神徳・授与品・知名度が高い神社である
- コミュニティーの中に協力者がたくさんいる
- 刀剣乱舞など二次元コンテンツとからんでいる
- 災害で受けた被害の修復・復興プロジェクトである
逆を言えば、これらの条件に当てはまらない神社のプロジェクトは失敗する可能性が高いと言えます。過去に埋もれてしまった神社のプロジェクトもたくさん見てきました。
ということは、8万社あるとされる神社の内、一部の神社を除いてほとんどの神社がクラウドファンディングを利用しても成果が出ないとも言えます。
クラウドファンディングは起案者が必死で拡散しないとサクセスしません。日々の仕事以外にもクラウドファンディングで支援を集めるための時間を割くことになります。少子高齢化、人口減少、コミュニティーが脆弱で協力者が少ない地方の小規模な神社では、むしろ資金調達が難しくなっていくのではないでしょうか。
現行のクラウドファンディングでは、むしろ神社はもっと苦しくなっていく未来が待っているのかもしれないと、私は個人的に感じているのです。
お金だけが必要なら現行のクラウドファンディングがおすすめ
とは言っても、実際にお金が必要なんだから、お金さえ集まればそれでイイんじゃない?というご意見もあると思います。私も別にそれでいいと思います。お金さえ集まればそれでいい、そういう考えの人にお金が集まってしまう現実もあります。理想が高くても、現実には逆らえません。
現行のクラウドファンディングプラットフォームで起案者がプロジェクトを立ち上げれば、プロジェクト関係者が一生懸命にSNSで拡散してくれるでしょう。どんなに困窮しているかを訴えてくれるでしょう。
災害で受けた被害からの復興など、一時的にお金だけが必要な事案に関しては、現行のクラウドファンディングの仕組みを使われるのが良いと思います。
しかし、神社として、信仰の拠り所としての神社を知らしめ、崇敬者とつながり、長く愛される存在としての神社を未来に残すには、神社に寄り添った、崇敬者との関係を築き上げる専門のサービスが必要だと私は考えています。
すうけいは困った神社を助けるだけでなく、頑張る神社も応援したい
弊会サービス「すうけい」はクラウドファンディングというキャッチコピーではありますが、実際には古くから存在している神社の崇敬会(すうけいかい)や奉賛会(ほうさんかい)を設立し運営するサービスです。神社の資金調達として昔からあった仕組みです。
普段から人と神社を結ぶのが「すうけい」です。ちょっと難しいので少しだけ引用して説明します。
言葉の意味
崇敬・・・すうけい
奉賛・・・ほうさん
崇敬とは文字通り「あがめうやまう」こと、神社にお祀りされている神さまのファンになるということですね。奉賛とは神さまやお祀りしている神社の「おてつだい」をすることです。境内の掃除やお祭りの準備もお手伝いですが、神社の維持に必要なお金を寄付することも大切なお手伝いです。
会の趣旨の違い
崇敬会・・・神社を応援する
奉賛会・・・事業を応援する
崇敬会は神社そのものを応援するファンクラブです。奉賛会は神社が神さまのために行う改修事業などを応援する会です。
崇敬会は神社が未来に続いていくためにみんなで支え合うという意味合いがあります、対して奉賛会は大きな金額が必要な修繕や整備の事業をみんなで支えようという意味を持っています。
崇敬会・奉賛会の説明の続きは以下のリンクからお読みいただけます。
お金だけでなく信仰と結びついた心の通いを体験してください
「すうけい」は時間の制約なく、長く崇敬者との関係を築き上げる仕組みです。奉賛会だけでも10年20年というスパンで考えられています。その間にゆっくりとゆっくりと数人、数十人、数百人、数千人、数万人、数十万人と崇敬者を増やし、神社と人の関係を築き上げていきます。
まずはお祀りしている御祭神を崇敬していただく、神社を支える宮司さん、神職・職員賛、氏子総代の人々など、神社を支えてきた人たちへの感謝や尊敬があって、その次にクラウドファンディングがあるほうが良いのではないかと私個人は感じています。
困った神社を助けるだけではなく、頑張る神社を応援したい。
実際にすうけいをスタートしてみて、「神社は氏子が支える」から「神社を社会が支える」に変わっていくには10年20年は軽く必要なんだなと実感しました。もしかしたら私が生きている間には無理かもしれない。
でも、スタートしたことには意味があると思っています。
宮司さんの考えや気持ちを汲んで、どうしてあげたら一番いいのか、どういう未来を築いていけば良いのか、人の気持ちや思いによって、プランはオーダーメイドになるわけです。
コレが正しい、アレは間違っている、というのは無くて、どれもが正しくて、人によってはどれも間違っていると考えています。
作業が滞り、焦る私に戸隠神社の諏訪さんがかけてくれた「これが神社の時間の流れ」という言葉の意味が少しずつ分かってきました。千年以上続く歴史の中で、有能ではない私がたったひとりで短期間で何かを大きく変えることなんて出来ない。
腕力で一気に押し切るのではなくて、気がついたら世の中が変わっていたというふうになっていきたいと思っています。
弊会の「すうけい」をぜひ御覧いただき、お金だけでなく信仰と結びついた心の通いを体験してください。
歴史的にも貴重な信仰文化である講社。戸隠神社の講社のことを戸隠講と呼びます。ご祈祷から宿坊のお料理、雪かきまでこなすスーパーマン。68代続く講社聚長である諏訪さんを取材しました。
ユネスコ文化遺産のお祭りを守っていくのは生半可なことでは許されない。覚悟して飛び込んだ社家の宿命の中で、31歳の若き宮司が取り組む時代にフィットした神社の実現。桑名宗社宮司の不破さんにお話を伺いました。
最初は氏子意識のなかった地域コミュニティを祭りを通してまとめ上げたお話。神社関係者の方にも参考になる記事です。社家の生まれではなかった宮司が数々の奇跡を起こす。戸越八幡神社宮司の大石さんにお話を伺いました。